無色透明のナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉を贅沢な源泉かけ流しで
ヌルヌル感に硫化水素臭、白色黒色の湯の華、泡付き・・極上の浴感
女帝孝謙天皇の伝説が残る霊験あらたかな名湯
秘境の山里“奈良田”は、1956年にできた奈良田ダムの底に元々の集落が静かに眠っている。かつての中心地に「洗濯池」と呼ばれる泉温35度ほどのぬる湯が湧き、洗濯や炊事で人々が集う社交場でもあった。この湯は孝謙天皇が病を癒したと伝わる由緒あるもの。伝承を次に引用。
『第四十六代孝謙天皇は女帝であった。生来健康にすぐれず、神仏に快癒を祈願されていた。ある時、夢に老翁が現れて「甲斐の国巨摩郡早川庄湯島郷に効験あらたかな霊湯がある」との神託があった。天平宝字二年(758年)5月、吉野を出発された女帝主従一向は御勅使川に沿ってさかのぼり、ドノコヤ峠を越え、奈良田にむかわれた。奈良田に滞在された女帝は温泉に入浴されること二旬にして病は全快されたが、この地をこよなく愛され、八年間ここに御遷居された。女帝、孝謙天皇が病をいやされ、御衣を洗われたといわれる霊泉が奈良田の里温泉の源泉になっている。』
一度入ったら忘れられない超ぬるぬるの重曹泉!
集落は奈良田湖脇の斜面にかろうじて移ったが、ともにダムの底に沈んだ洗濯池の湯を偲んで、1978年に「奈良田の里温泉」階段下の駐車場脇から、洗濯池方面に向かって掘削を開始。地下212mの地点で源泉を掘り当て、復活を得、1984年に日帰り温泉施設を開いた。泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉で毎分40L湧出。無色透明ながら、ふんわりと硫化水素臭が漂い、白色黒色の湯の華が咲く。何より重たいほどのヌルヌル感が特徴的。まるで極上のローションのような、一度入ったら忘れられない浴感で、湯上がりは重曹成分によるさっぱり感と塩分の保温効果が続く。
成分的には塩分や重曹成分こと炭酸水素イオンが主だが、濃度は636mg/kgとさほど高くない。保湿力のあるメタケイ酸、殺菌効果の高いメタほう酸も目立つが、この圧倒的なヌルヌル感はアルカリ性であることと、含有成分のバランスが生み出した奇跡の産物であるようだ。
檜と早川町特産の白鳳石で整えた風情ある内湯
浴場は内湯のみ。レイアウトが左右反転する男女の湯は内容、雰囲気とも同じで、天井や壁、二槽式の湯船は檜造り。床石は早川町特産の白鳳石で整え、ガラス越しに南アルプスの山々や奈良田湖など四季折りの自然美が楽しめる。
湧温42.2度の源泉は、加温も加水もしないかけ流しで配湯。まず、約5人が入れる一回り小さな浴槽に注ぎ、あふれた湯は下段の約10〜12人が入れる浴槽に流れ込む。そのオーバーフローは床に流れ出ていく。外気温により若干上下するが、湯温は上段で約41度、下段で約39度ほど。冬季は1〜2度低くなる。
新鮮な手つかずの源泉ならでは、湯口に置くコップで飲泉OK。ほんのり甘味と塩味、硫黄味がし、なかなか飲みやすい。消化器系や通風などの成人病に効くという。洗い場は男女各6席ずつで、ボディソープ&リンスインシャンプーを用意。シャワーやカランも源泉使用。アルカリ泉ゆえ、あまり泡が立たないのはご愛敬。
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男湯:浴室
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女湯:浴室
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上段の一回り小さな浴槽
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下段浴槽は上段より湯温が下がる
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新鮮な源泉を飲泉できる
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洗い場のシャワーやカランも源泉
檜造りの脱衣所に木の棚が並ぶ、貴重品は受付の100円返却式ロッカーへ
備品はほとんどないので、自分で事前に用意
檜造りの脱衣所内には鍵の掛かるロッカーはなく、山の秘湯らしく木の棚が男女各28人分用意されている。貴重品は、あらかじめ館内受付付近の100円返却式コインロッカーに入れておくか、持ち込み自体を控えた方が吉。壁には鏡と温泉分析表を掛け、湧き水使用の大きなシンクが3つ。体重計と脱衣籠少々。お手洗いを併設。基本的に自分が入浴に必要とする物は持参、または、事前に受付で購入しておこう。ドライヤーについては受付にて無料貸出しを行っている。
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男湯:脱衣所
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女湯:脱衣所
昔懐かしい縁側や庭先のベンチで座って一休み
横になれる館内の座敷は入浴料金込み1,500円の有料休憩室
どこか懐かしい古民家を利用した「奈良田の里温泉」の湯上がりに座って休めるスペースは、縁側とその周辺の庭先に置いた素朴なベンチ。あけびが伝う棚は夏季にはちょうど良い日除けになる。裏手には、引いた湧水を貯める小さな池があり、ワサビがすくすくと育っている。
TVが置かれた座敷は入浴料金込み1,500円の有料休憩室。1回入浴制なので、もう一度入浴する場合は料金がかかるが、登山客を中心に重宝されている。
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昔懐かしい縁側や庭先
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有料休憩室の座敷
地の素材を使った郷土料理が頂ける食事処「こんぼうす」
人気は山梨名物ほうとう、鹿料理、虹ます塩焼に手作り刺身コンニャクも
食券制の食事処「こんぼうす」は地の素材を使った郷土料理が中心。「こんぼうす」とは奈良田の里の方言で食いしん坊の意。席数はテーブル2卓、座敷2卓と、こじんまりしているが、縁側や庭先、有料休憩室で食べてもOK。メニューは麺類550円〜、ご飯物など。人気は山梨名物ほうとう800円、山里ならではの鹿焼肉定食1,100円。虹ます塩焼500円、早川町産の生芋を使った手作り刺身コンニャク300円など各種一品料理やアルコール類も揃う。
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食事処「こんぼうす」
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尺イワナの魚拓に目が行く座敷席
奈良田の民芸品や物産、山梨名物ほうとう、漬物、地酒、菓子など販売
奈良田の里温泉を再現したオリジナル入浴剤や方言てぬぐいがユニーク
受付近くの土間にあるお土産コーナーでは「みみんこう」や「奈良田おぼこ」など奈良田伝承の民芸品、干ししいたけなどの物産、ほうとうや漬物類、地酒、菓子など食品中心に販売。源泉の成分を再現したオリジナル温泉の素「女帝の湯」は1回用25g120円、10回用250g650円。奈良田では、隔絶された山峡の歴史から、山梨県でも、ここでしか使わない独自の方言が発達。その方言を一覧にした「方言てぬぐい」500円も良い思い出に。入浴グッズは受付で販売。
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土間にあるお土産コーナー
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オリジナル温泉の素「女帝の湯」
南アルプスの山岳写真館や歴史民族資料館、奈良田集落を守る奈良王神社
宿泊で温泉を楽しむなら名宿「奈良田温泉 白根館」が人気
徒歩1、2分の場所に観光スポットが点在。「南アルプス山岳写真館・白籏史朗山岳写真記念館」は南アルプスの撮影をライフワークにする国際的な山岳写真家、白籏氏の作品を展示。「歴史民俗資料館」は独自の文化を発展させた秘境・奈良田の貴重な資料を見ることができる。「奈良王神社」 は伝承の主、孝謙天皇(奈良王)を奉った神社で、奈良田集落の祭事や社交の中心地。宿泊するなら源泉は異なるが「秘湯を守る会」所属の「奈良田温泉 白根館」が名宿として知られる。
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山岳写真館「白旗史朗記念館」
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「早川町歴史民俗資料館」
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脱衣所:木の棚が28個
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シンクは3つ
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温泉分析表や禁忌症などを掲示
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お手洗いを脱衣所内に併設
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あけびの伝う棚の下のベンチ
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裏手にあるワサビが育つ清い湧水
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有料休憩室で自由に飲めるお茶
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通路脇に2室並ぶ有料休憩室
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食事処「こんぼうす」メニュー
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山梨名物ほうとう定食1200円
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まず食券を購入して注文
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お茶やお水は自由にどうぞ
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奈良田独自の方言てぬぐい
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願い事成就・縁結びのみみんこう
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初めて小正月を迎える女児に贈る
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奈良田産の干ししいたけ
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山梨名物ほうとう
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地酒やワイン、加工品など
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お菓子や漬け物類
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入浴グッズは受付で販売
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湯上がりに嬉しいアイス
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浴場は写真を展示した通路の先を
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左の通路の先の渡り廊下を進んで
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ここが浴場入口
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伝承の説明板と湧水
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山里の定番!スズメバチの巣
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立派な鹿の角の飾り物
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奈良王神社
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奈良王神社の由緒ある御府水
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奈良王神社は奈良田集落の中心
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施設入口
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受付
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裏手から見た奈良田の里温泉全景
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この階段の下が駐車場
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近道コースは思ったより楽チン
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宿泊するなら名高い「白根館」!
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かつての集落が眠る奈良田湖
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現在の奈良田集落
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身延駅からバスは超ローカル
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美しい早川の流れ
南アルプスの秘境・奈良田の里で極上のヌルヌル温泉を楽しんでください
新緑や紅葉、南アルプスの登山シーズンは12時〜14時が賑やかです
南アルプスの奥深くに抱かれた秘境・奈良田の日帰り温泉です。当地は最寄り駅となるJR身延駅から一日に数本のバスで約100分。車ですと中央自動車道甲府南ICから約60km。早川沿いを走る南アルプス街道こと県道37号を延々と進む山道ですので、約2時間くらいはかかります。丸山林道ルートもありますが、秋〜春は閉鎖しているのと、通行止めになることも多い悪路ですので、オススメはしておりません。
このように隔絶された奈良田の里には独自の方言や文化があります。比較的賑わう時間帯は土日祝、平日ともに12時〜14時頃。新緑や紅葉、北岳などの南アルプス登山シーズンは特に多くの人がいらっしゃいます。
遠い山峡の地にある温泉ですが、泉質はお墨付き。長く通ってくださるお客様や遠くからお越しの温泉ファンの方がたくさんいらっしゃいます。肌あたり優しい美人の湯、女帝の霊泉に是非一度足をお運びくださいね。